轟雷完成。そしてちょこっと「写真の話」と「色の話」。

はい皆様、ご機嫌いかがですか。今回は轟雷4回目。完成品披露です。


まずはじっくり完成品を見ていただきましょうか。

キャタピラを展開したところ。


今回の見せ場はなんと言ってもドットマトリクス迷彩です。なんか、ちょっとこんな魚いたよなあ的なカラーリングですが。カレイとか。別に参考にしたわけじゃあないんですけどね。偶然です。まあ、あいつらも迷彩模様ですからね。
で、俯瞰で見るとその様子がよくわかります。

写真を見るとわかりますが、フラットに光が当たった状態では面の認識がしにくいですね。とりあえず視覚的には迷彩効果があるってことです。完成品の胴体は前回終わった塗装の上から若干のウェザリングを施してあります。
具体的には
1)エナメル塗料のハルレッドでウォッシング。
2)部分的にエナメル塗料のタンでウォッシング。
3)ハルレッド、フラットブラックなどで調子を見ながらスミイレ。
4)エナメルのジャーマングレー+フラットブラウン+ホワイトでエッジのみをドライブラシ。
5)田宮のウェザリングマスターAセットからライトサンドとサンドでエッジを中心にウェザリング

といった具合でしょうか。



続いてディティール。
何といってもこの機体の一番の特徴であるキャタピラは、プラバンでラバーブロックを再現。ピースのサイドには穴あけ、転輪にはリベッティングを施しました。

キャタピラにはちょっとヘビーめにウェザリングしてます。
手順を紹介すると
1)転輪はMrカラーのジャーマングレーで塗った後、エナメルのハルレッドでスミイレ。
2)キャタピラ部分はMrカラーのジャーマングレーで塗った後、ラバーブロック部分をフラットブラックで筆塗り。
3)エナメルのフラットブラックでウォッシングした後、エナメルのタン、ジャーマングレー、ホワイト等を混ぜた塗料でドライブラシ。
4)田宮のウェザリングマスターAセットからライトサンドとサンドでエッジを中心にハイライトを入れる。
5)転輪部分のみごく少量の「こすって銀SUN」で磨く。
6)100均でかった「やわらかパステル」の黄土色を少量塗りつけ、こびりついた土を再現。

てな感じです。
まあ、このあたりの作業はやっては戻り、戻ってはやりの行ったり来たりなので、正確な順番で作業してお仕舞い、というわけではないんですけどね。ウェザリングの基本は実機の使用状況の再現ですから、その機体がどんな風に扱われ、汚れていくのかを試行錯誤しながらやっていく訳です。今回の作例ではネット上の実物の戦車の写真がずいぶん参考になりました。足元は汚れがヘビーなのにボディはそんなに汚れてないとかね。なので足の接地面から上体に行くに従って汚れを少なく表現してあります。

こっちのほうがわかりやすいかな。

上半身はざっくり埃を被った風。使用後にまだ掃除をしていないという体で。




はい、続いてのディティールアップ・ポイント。
センサー類にはお約束のHiQparts製ミラージュデカール。肩口のセンサー部分には真鍮線を曲げたガードパイプを装着。胸の上面にはヘックスリベット1mmを追加しました。

肩口のウェポンラッチにはワンポイントでヘックスリベット1mmを、背面のウェポンラッチにはマイナスモールド1mmメタルリングの組み合わせでディティールを追加しました。今回は塗装を目立たせるためにあまりやってませんが、「全身ボルトヘッドだらけ」なんていうのも面白そうです。なにより戦車っぽい。そのあたりは皆さんのお好みでどうぞ。

各部のマーキングは箱絵を参考にHiQpartsのウォーターサイドデカールの数字部分を組み合わせました。「<」の部分は市販のホワイトのデカールから切り出したものです。

そしてフトモモ付け根部分のライトにはSPプレート2mm用と1mm用を使用。レンズはWAVE製Hアイズ クリアに着色して使用しました。そしてここにも真鍮線で自作したガードパイプを追加。結構よく割れそうな感じがしたもんで。戦車用のエッチングパーツ等を流用してもいいかもしれませんね。

わかりにくいのでパーツで見るとこういう風になってます。


このキットには「握手」「平手」「火器の持手」「握った持手」と豊富な手首オプションが付いています。写真に写っているのだけじゃありません。じゃあ何で写真に撮らないかというと……撮影のときまで塗るのを忘れてたんです。失敬! ナイフはサンディングスティックの600番から1500番まで磨いた後、Mrカラーのスーパーファインシルバーを塗り、クリアコートしたものをコンパウンドで磨いています。

ちょっと手首を変えるだけで表情が変わります。

せっかくなので平手とナイフで写真を撮ってみました。

中々いいんじゃない?




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◆さて、ちょっとここで休憩。『写真の話』をしましょうか。


実は当Blogの読者の方からメールがありまして、バックがグラデーションになった写真はどうやって撮ったらいいの? というご質問をいただきました。え〜、写真の撮り方は知ってるんですが、写真はあんまり上手くない私が説明するのもなんですが、一応ご質問には答えたい。
ということで、通常、スタジオなどでバックがグラデーションの模型撮影をするときには、大体下の図のようなセッティングをします。バック紙は白やグレーの単色です。青や赤といったバック紙を使うと色が反射して撮影物に写りこむ、いわゆる「ハネル」という現象が起こりますから、私はあまり使いません。

下に敷くのは通称「一間板」と呼ばれる1.8m×0.9mの板です。この板をベースにバック紙をカーブさせて撮影物の後に途切れ目が出ないようにし、うまいことトップライトを調節して光の当たらない「影」の部分を作ります。これが写真に撮ったときにグラデーションとして写ります。私が連載しているPCfanのガンプラ記事でも、大体このようなセッティングで撮影しています。
例えば白いバック紙で撮るとこんな感じに。

ただこの方法だと、えらく広い場所が必要になり、自宅で撮るのは難しい。そうだなぁ、何もないスペースが最低8畳くらいあれば撮影できるでしょうか。撮影時のライトの光量も必要です。なので「グラデーションバック」というものを使います。えー、大きすぎて写真に撮れないので、図版で説明。
 こういうものです。
はい、単純に言うと大きな紙にグラデーションが印刷されたものです。プロカメラマン用のバック紙としては昔からあるものなのですが、価格が高く、サイズが大きすぎたりと、個人で使うには不向きでした。ところがあったんです。手ごろな値段で使える丁度良いグラデーションバックが。G PARTSというネットショップから購入できますので、詳しくはそちらから。これのいい所は、とにかく撮影場所をとらないでグラデバックが使えるところです。例えばこんな風に

バックに多少光が入っても、元からグラデーションがかかっているので問題ありません。まあ、あんまり直で当たっているとバックが跳んで(白くなって)しまい、グラデーションペーパーを使う意味がなくなってしまいますが。
撮影スペースはスタジオ撮りの約半分以下で済みますから、自宅でもグラデバックで撮影可能です。で、撮ったのがこの写真。

6畳間で、しかも半分は家具やらプラモの箱やらが占領している部屋で撮っています。グラデバックで撮影したい方は挑戦してみてくださいね。


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◆さて、脱線ついでにもひとつ。ちょいと『色の話』を。


前回の記事に「缶スプレー塗装でもドットマトリクス迷彩ができますか?」というご質問をいただいたのですが、えー、基本的には可能です。多分。ただ、やはり塗装が厚くなるのは覚悟しないとならないでしょう。今回の作例でもそうですが、エアブラシでなるべく薄く吹くように気をつけていても塗り分けに段差ができます。これはトップコートを厚く吹き、研ぎ出しをすることで解決することができますが、やはりエッジがだれてしまったり、ディティールが埋まってしまうことが多いです。また、「抜合せ」という手法を使えば平らな塗装面を作ることができますが、一色塗る毎に、塗り終わった部分とこれから塗る部分のマスキングを繰り返すという方法のため、ドットマトリクス塗装では現実的とはいえません。じゃあ塗装の厚みを我慢すればいいのかというと、今度は「色が混ぜられない」という問題が出てきます。
前回説明したように、ドットマトリクス塗装は「色相」「彩度」「明度」の色の三要素のうち、1色は他の色と2要素が異なったもの。残りの2色は1要素が異なったもの、という風に構成されていることが多いのです。したがって、混色のときにこの要点を満たすように微妙に調整しています。混色のできない缶スプレーだと、よほど上手い構成で色を見つけない限り微妙な違和感が残ると思います。「模型を何色に塗るなんて個人の自由じゃーん」といわれれば、なるほどそうなのですが、多分、こういうことが起こります。



はい、シアン、マゼンタ、イエローの円を並べたものです。拡大するとこういうものです。

この時点で言うならば「パステルカラーの水玉迷彩だぜ!」ってことになるのですが、縮小すると困ったことが起こります。

最初の画像の1/4の大きさなんですが、なんか、ただのグレーに見えませんか? よく見れば、ちょっと色が入ってるかもって感じで。この作用が「分割混色」という作用です。ちっちゃな点々が集まると、絵の具で色を混ぜたかのように違う色に見えるって事なんですが、カラーの印刷物なんかはこの作用を利用しています。
まあ、この見本は極端な例ですが、今回の作例のドットの大きさでも「なんか全体の色調がはっきりしないよなぁ」とか「ドットにはなってるけど迷彩になってないよなぁ」という事は起こります。実は本塗装に入る前に実験して確認済みです。ドットマトリクス塗装は基本的に小さな四角の集合体ですから、この作用が起こりやすい。なので、微妙な混色で分割混色のような現象を回避しているわけです。ドットの大きい、つまりサイズの大きい模型なら比較的分割混色が起こりにくいので可能かもしれません。なるべく同系統でバリエーションの多い色、例えばグレー系の夜間迷彩のようなものなら缶スプレーでも可能かもしれませんね。

えー、一応プロモデラーなのにコンプが壊れて大騒ぎの自分が言うのもなんですが、コンプレッサーとエアブラシがあったほうが絶対に模型作りが楽しくなります。混色の面白さはハマってしまうとやめられませんよ!

こんなもんで参考になりましたか?

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さて、では今回はそろそろこの辺で。轟雷完成編、いかがでしたでしょうか?
最後は轟雷君の雄姿でお別れしましょう。


次回からは本編と同時に新しいコーナーもスタートする予定です。どうぞお楽しみに。コメントや質問もお待ちしておりますよ。

それでは次回も火曜日更新。乞御期待!!