空間機械のディテールって何なのかよく考えてみる。「HGUCサザビー」三回目。

はい皆さんこんにちは。
ワールドカップもいよいよ佳境を向かえ、夏休みのある人はそろそろ休暇の予定も立てちゃったりするであろう今日この頃。皆さんいかがお過ごしでしょうか?
そんな一般の生活とは正反対、休みも有るんだか無いんだかという暮らしが普通の私線香亭。ワールドカップの盛り上がりもどこへやら、日々模型を作り続ける日々です。
そんな訳でサザビー三回目、張り切ってまいりましょう。


さて、前回までは右半身だけプロポーション変更が終わっていた状態でした。

今回最初の作業は、この右半身をゲージ代わりに左半身の加工をすること。


とにかく左右対称になるよう気をつけながら各パーツを加工していきます。この作業を写真で紹介すると、前回と同じ写真になってしまうので、いきなり加工後の写真。


上半身と

下半身のアップ。



作業途中で削り落としてしまったディティールの再生もしてます。0.6mm幅に切り出した0.5mmプラバンをそれぞれの長さに切り、両端を丸く加工して貼り付けています。意外に知らない人が多いのですが、ポリパテで加工した部分にでも、プラ用の接着剤でプラ部品を付けることができます。これはポリパテの表面には目に見えない微細な穴が開いているためで、接着剤で解けたプラがその穴に食いつくんですね。



ついでに腕の取り付け軸も若干削っておくと胴体と肩の間が多少狭くできます。


さて、ここまで来たら後はディティールアップして塗装という具合なのですが、今回は珍しく、ここでサフを吹きます。ガイアノーツサーフェイサーエヴォ・ホワイトを2倍程度に薄めて塗っています。

その理由は、今回の作例ではポリパテを多用したため、細かい気泡や割れなどがないかチェックするためというのと、ディティールアップ、特にスジボリの入れ方が気になってしまったからです。


梅雨中の作業なので湿度と気温は常に高め、そこにポリパテですからプラとの伸縮率の違いで割れや段差ができやすいのです。成型したときはきれいでも、後になって段差やクラックができるという場合もあります。しかも色が違うので発見しにくい。案の定、こんなところにクラックが発生していました。


サフを吹いたもうひとつの理由、スジボリの追加についてですが、一度削り落としてしまったディティールを再生しているときに、ふと考えてしまいました。

これって、どう考えてもリブだよなぁ。
「リブ」というのはパーツの広い面に強度を与えるために入れるものです。わかりやすくいうと、ドラム缶の横にある段々みたいなものですね。すなわちこのパーツは、少なくとも「リブ」の入っている部分は一体パーツだという事になります。これが別パーツであるなら組み付けシロ部分の面積を増やすとか、複合材を用いて強度を上げるといった方法があるはずですから、やっぱりここは一体成型だと解釈するのが正しいでしょう。

そう考えるとリブの部分は外してスジボリをするべきだと判断しました。もしリブと通常の外装が直接的にパネルとして繋がっていたら、極端に強度が違うため、外力が加わったときにそこに力がかかって壊れやすくなってしまいます。そういえばリアルな宇宙開発の本の中に、宇宙空間で工業生産ができる様になると、これまでとは比較にならないほど巨大な一体成型パーツができるようになる、と書いてあったのを思い出しました。なるほど、そう考えるとサザビーというのは非常にワンパーツが大きい機械なんですね。

ただ、それだけだとあまりにもそのままだなぁ、と頭を悩ませた末、辿り着いた結論が「宇宙空間機械としてのパネル分割」を再現してみよう、という事です。そうなるとプレーンな状態で模型全体を見てみたい、でもポリパテと成型色の赤でラインのメリハリが掴みにくい。だったらサフ吹いちゃおう、という訳です。


そうなると何かお手本が欲しいなぁ。実在する宇宙機械って殆んどが使い捨てだし、そうでないのはスペースシャトルとステーションくらいだし。どうやら今の宇宙機械は参考程度にしかなりません。そこで、しばし悩んで引っ張り出してきたのがMGシナンジュ。前にPCfan誌の連載で作ったものです。

モビルスーツ・デザインの流れで言えばサザビーの直系に当たる、このシナンジュ。お気づきの方も多いと思いますが、各部のユニット構成が殆んどサザビーと同じです。こういうところがカトキデザインの優れたところなんですね。このユニットデザインを参考にスジボリを入れていきたいと思います。


MGシナンジュを見てみると、単面にパネルラインが入っている場所が一箇所もありません。その代わり、各ユニットが細かく分割され、それぞれの意味を持つように構成されるという、非常に洗練されたデザインになっています。サザビーはそれよりも前の機体ですから、若干野暮ったくてもいいのではないかと思います。


まずは腕と腰のサイドアーマー。サイドアーマーというよりもスラスターユニットに近い役割を果たしていそうです。そこで可動部のユニットとディフューザー的な役割を果たすであろう部分を分割としました。「ここにならリブが入っててもおかしくないよね」的なパネル分割です。


肩部分は他の場所よりも狭い範囲に多くのリブが入っているため、スパイクの無いショルダーアーマーだと考えました。ショルダーアタックをしたときに碗部のサイドスラスターの保護も兼ねて大きめなんだろうな、と。パネルラインは破損の際の整備がしやすそうなラインというのを意識しました。


胸のサイド部分は上部に分割線を入れました。これ、この辺りで分解できないと「腕を外さないとパネルが外れない!」ということが起こると思うので。


脚部フェアリングは結構考えものです。悩んだ末にゲルググのVer.2.0を参考にリブ部分を避けて外周にアウトパネルがあるという雰囲気にしました。
 これはゲルググ

アップにするとこんな風。この後、若干スジボリを追加しました。


足首はシナンジュとほぼ同じパーツ構成で再現されているので、控えめのディティールを入れただけで良しとします。



さて、ここからはいつもと同じ手法でディテールアップ。
まずは新しく届いたこんなものから。

HiQpartsのセンサー用メタリックシール グリーンオーロラアイズ 透過タイプです。
メタリックシートの上に乗せてみるとこんな風に見えます。緑の部分はメタリックシール グリーン、ピンクの部分はメタリックシール ピンク、シルバーの部分は普通の銀紙です。別にイタリア国旗じゃないですからね。


これをSPプレート 1.5mm用に貼り付け、キットパーツのモノアイ部分と差し替えます。

ヘルメットを外すとこんな感じ。

良く光ってます。


ついでにもうひとつ。HiQpartsのリニューアルされたマスメツールを使ってみました。

新しいマスメツールには写真の三角形のものが追加されました。これを切り出して……

パーツに貼り付け、面打ちでアタリを取って……

アタリにピンバイスで穴を開けると、正確に正三角形のディテール穴が開けられます。



バックパックは整面も兼ねてディテールを削り落としてしまいます。

その後にマイナスモールド5mmを付けるとよりシャープな仕上がりに。



ついでに後部スカートのメカ露出部分にもマイナスモールド。4mmでぴったりはまります。



ファンネルコンテナにも一工夫。手前の物のようにスリットを作ると完成後も中のファンネルがチラ見えで良い感じになるはず。



肩のアポジモーターっぽいディテールはデュアルパイプ3mmに差し替え予定。こういう小さい部品は条件が許せばランナーに付いたまま加工すると楽です。


普通、ここまで来たら一気にバーニア類も、と行きたい所ですが、今回はここまで。
今塗装準備中なので触れないんです。しかも、この量。




そんなこんなで、

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今週の「遥かなるホワイト・グリント」



前回の流れでいうと、こっちもディテールアップパーツの取り付けといきたいんですが、今やり始めると絶対にどれがどのバーニアパーツだか判らなくなる自信があるので、今のうちにできる作業をチマチマと進めておきます。
例えば頭を良く見てみると、後頭部に生えているツノ状の4本のアンテナチックなやつ。

これを真鍮パイプと洋白線で置き換えるとこんな感じになります。

細かいところですが、結構効果が大きい。
ついでに後頭の下側のディティールも洋白線に差し替え。

左がキットの状態。右が差し替えた後。
まあ、こんなことをやりながらサザビーのほうのバーニアの塗装待ちなんですが、それだけじゃ寂しいのでこんな写真を撮ってみました。

はい、オーバーブースとモードのホワイト・グリント。

真鍮製のアンテナで、ブースト・モードでも中々の男前ぶり。

シナンジュ戦、という訳ではなく、ブースターのパイプ接続を作った状態という写真です。

このパーツ数、普通に処理するだけでも結構な手間なんです。

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さてさて、そんなこんなで今週はここまで。次週はいよいよサザビー完成編です。コメント、ご質問もどしどしお寄せください。
それでは次回も火曜日更新、乞御期待!!