最終最後の総仕上げ。「ホワイト・グリント完成編 その2」。そして……

はい皆様こんにちは。
今回はホワイト・グリント完成編の2回目。長いこといじくり回していた模型が、とうとう完成します。それでは早速。

箱絵のせいか、はたまたムービーのせいかイメージがこんな感じだっので、この写真でトップ画を作ってみました。

周りから見るとこんなふう。



上半身。カメラ・アイは電飾じゃなくガイアノーツ蛍光クリアーを塗ってUVライトを当てています。結構いけるでしょ。

カメラ・アイ部分は差し替えで「テンテンテンテン」っていうやつも再現。キットにはクリアブルー成型のものとクリアー成型のパーツの2種が付属していたので、クリアーのものを利用して「テンテン・バージョン」を再現しました。作り方はいたってマニュアル。

内径0.41mmの真鍮パイプをポンチ代わりに、マスキングテープを切り抜き、蛍光クリアーを塗ったパーツの上に貼った後、ブラック→ブルーと塗り重ねただけ。やや失敗気味ですが良しとします。

これとは別にシャッターが閉まった状態のパーツも付属。しっかり塗装しておきました。

下半身。各所のウェザリング具合と差し替えたメタルシリンダーが見せ所です。

たしかプロモーションムービーで、こんなポーズをとってたような気がする。


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ここへんで今回のウェザリングのしかたを説明しておきます。チッピングについての質問メールが、確実に来ると思うので。

まず用意するのはエナメル塗料のフラットホワイトとフラットブラックを混ぜたもの。写真はいつも使っているスミイレ用の物凄く濃いグレーです。油絵具のように塗料皿に出して固まったものに用材を加えて塗装します。左側の色の薄いほうが溶剤を入れた皿。溶剤にはNOUBEL社製のペトロールを使っています。
この「ペトロール」というのは元々油彩に使用する溶剤で、絵具メーカ数社から色々な種類のものが発売されています。有名なメーカーを挙げれば「NOUBEL」か「HOLBEIN」といった所でしょうか。どちらも老舗の画材メーカーです。プラモデル用のエナメル塗料はこれらの油絵具と同じ溶剤成分で希釈できます。では、なぜわざわざ専用溶剤ではないものを使うのかというと、専用の溶剤より若干乾燥が速いからなのです。
よく、「ペトロールを使ってスミイレするとプラが割れない」という勘違いをしていらっしゃる方がいますが、そんなことはありません。ペトロールでも割れます。実はラッカー塗料でも割れることがあります。これは塗料に含まれる溶剤成分がプラを犯して脆くするためで、力のかかっている部分のパーツに割れが生じてしまうのです。これを避けるためにどうしたらいいかといいますと、溶剤がプラを犯す前に溶剤成分を乾燥させてしまえばいいのです。具体的にはドライヤーで強制乾燥させるんですが、その時の乾燥がペトロールのほうが普通の溶剤より速いんですね。ラッカー系の塗料で割れが起こりにくいのは、エナメル系塗料より乾燥がうんと早いから。したがって気温が低い雨の日などに塗装をしていると、ラッカー塗料でもパーツの割れを起こすことがあります。
閑話休題
さて、続いての道具は「筆」。

大体この3本で用が足ります。



まずはラッカー塗装を終えて、軽ーくスミイレだけした状態のパーツ。ここに平筆で、薄く溶いたエナメル塗料を塗り、ドライヤーで強制乾燥させた後、溶剤を含ませたキムワイプでざっとふき取ります。キムワイプとは医療や精密機械などの分野で使われるティッシュのようなもので、細かい繊維が残らないため美しい拭き取りができます。大き目のDIYショップなどに置いてあると思いますし、無ければアマゾンなどでも買うことが出来ます。あると便利なので、購入しておくことをオススメします。エアブラシの掃除にも使えるしね。

そしてその拭き取りが終わった状態。この拭き取り加減が丁度良い「ムラ」を演出するので、意外と重要です。ヘビーな汚れを表現するには濃く=拭き取りを少なく、軽い汚れの場合は薄く=しっかり拭き取り、という作業をします。

拭き取りが終わったら、またドライヤーで乾燥させておいて、面相筆でチッピング(擦れ痕)を書き込んでいきます。この時塗料は薄め。下地が若干透けて見えるくらいが丁度いいと思います。

そして、それを何回か繰り返すと、こんなふうになります。この作業、もう殆んどお絵かきです。削れて跡が付きそうな所を、それらしく書いていきます。この作業は慣れるまで修練するしかありません。今回は若干オーバーになりすぎたので、綿棒に溶剤をつけて擦り取っていきました。一発で決まれば良いんですが、中々上手くいかないもんで、完成後でも全体のバランスを見ながらこの作業をしたりすることもあります。まあ、失敗しても拭き取れますから、訓練のつもりで、まずやってみるのが一番の近道です。

そして完成。


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さて、今回、本体に使用したカスタムパーツはこちら。

上半身、背面センターのバーニアはBSバーニア ロング 10mmを使用。

スネのバーニアはBSバーニア ノーマル 8mm、アキレス腱部分にはメタルシリンダーM。その他、肩のスラスターにはデュアルパイプの3mmと2mmを使いました。



そして、今回大活躍だったのがこれ「アクアリンカー」。HiQpartsさんから「これ良いですよ」ってな具合に勧められたんですが、バーニアなど力のかからない部分のメタルパーツの接着には最適です。何といっても希釈無しで使えるのが良い。乾燥後もGボンドなどよりかっちりと硬度が出ます。


続いて武器類。

ライフルはスターブライトアイアンで塗装した後、クリアーブルー、スモークブラックと塗り重ねていき、フラットクリアーでコートした後に若干削り作業をし、最後に少量の「こすって銀さん」で、部分的に磨きを入れました。ハンドウェポンは消耗品に近いでしょうから、本体よりもウェザリングを控えめにしました。

肩口のミサイルランチャーは本体色を塗った後に明るいグレーでざっとドライブラシ。その後、ごく控えめにチッピングを入れました。たぶんこれも使い捨て系の兵器だと思うので。


さあ、ここまで来たらこれじゃろ、ってことでオーバーブースト・モード。

でかい。でかくて写真に撮りづらい。

ちょっとアップで。


で、オーバーブーストと来たらこれですね。

「VANGERD OVER BOOST」略してVOB。VOBに関しては仮組みのまんま放置してたような気がするので、ちょいと詳しく写真を見せましょうか。


実は皆さんが気が付かないようなところに、ちょいちょい手を加えてます。例えばこんなところ。

頭の上のディティールは面出しもかねて一度削り落とし、ディテールをメタルパーツに置き換えています。いや、特にシャープさがどうこうという訳ではないんですが、ディテールのすき間にパーティングラインとかヒケとかがあると処理が面倒でしょ。例えばこんなふうに。

こんな時はいっそディティールを削ってしまって新しく付け替えたほうが早い、って時もあります。

まずはざっくりディテール面を削っておいて

センターに仮穴を空けます。そうしたら面位置まで削り、パーティングラインも消しておいて、

穴を1mmに広げます。

そこにリベットパーツを接着すれば完成。ここに使ったのはヘックスの1.5mmです。

塗装して取り付けてみるとこんな感じです。まあ、あまり目立たないので気にならない方はそのままでも。

ここも同じように処理しています。



そんなこんなで、基本塗装が終わった状態。この後デカール貼りトップコートを吹いたら、先に書いた手順でウェザリングを終えて完成です。VOBは使い捨てなのでウェザリングはごくあっさり目に。あ、今回バーニア類は全て差し替えていますので、この写真ではまだ付いていません。


そして、

完成。



VOBに使用したバーニアパーツは以下です。
メインスラスター:BSバーニア ロング 10mm
サイドスラスター:BSバーニア ロング 6mm
今回本体も含めてアウターパーツはグレー(ニュートラルグレーIII 85%+Ex-ホワイト 10%+フラットベース 5%)、インナーパーツはスターブライトアイアンで塗装してあります。



ちょいと目立つところではプラで出来ていた接続ラインを蛇腹チェーン ブラック1.5mmに差し替え。それなりの雰囲気があるパーツです。



デカールは本体ともどもNCデカール05 グレーの1/100用を使用。本体、VOB含め一枚で足りました。このデカール、薄くて糊がしっかりしているので、なれない方はちと手こずるかもしれませんが、仕上がりは最上級です。


さあ、ここまで来たら合体じゃ! 出撃じゃ!!

プロモの出撃シーンの感じ。ごごごごごごごご、って所ね。


なんだか暴力的な感じさえする。本体ブースターを繋ぐケーブルに蛇腹チェーンメッシュチェーンを使っても面白そうです。

いざ飛行形態で出撃。

やっぱり暴力的な感じがする。でもそこが魅力だな。

何といっても「二丁拳銃」がバカっぽくて素敵。



飛行形態時のラジエター? は差し替えと可動両方混在で再現できます。頭はすっぽり胴体の中に収納。こんなもんでいかがでしょう?

さて、今回の塗装レシピを紹介しておきましょう。
まずはグリント、VOB共々本体色は
白=Ex-ホワイト(90%)+Ex-ブラック(10%)+ナチュラルブラウン(少々)+フラットベース適量
グレー=ホワイト(15%)+Ex-ブラック(75%)+フラットベース適量

デカールを貼った後Ex-フラットクリアーでコート。この上からエナメルの濃いグレーでウオッシングし、調子を暗くしています。VOBはグリントより明るめに(拭き取りをきちんと)しています。
VOBの薄いグレーはバーニアのアウターパーツと同じ
ニュートラルグレーIII(85%)+Ex-ホワイト(10%)+フラットベース(5%)
で塗装しています。



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そしてここで、皆さんに重要なお知らせがあります。
突然ですが、このブログの更新は本日が最後になります。


前のブログから数えて約7ヶ月、色々とやってまいりましたが、この度、新しく出来た模型のポータルサイト「MODELER'S PRESS JAPAN」という所からお誘いをいただきまして、そちらに移転することにいたしました。実のところ、このブログを始めようと思ったのには大きな訳がありました。それは、このブログを始める前、雑誌で連載をしているころからの思いに端を発しています。


これまで、雑誌連載等で模型を作り続けてきた私ですが、メールでいただく質問を読んだり、あちこちで模型好きな方々のお話を聞くにつれ、「なんだか妙なことになっている」と感じていました。例えば、「模型を作りたいのだがランナーから部品を切り離すのが面倒だ」とか「誰々さん(某有名もデラーさん)のような完成品が欲しいのだが、どうしたら手に入るか」とか。そのような類の質問は、ごく一部の限られた人々の質問という訳ではなく、地域、年齢を境にすることなく、多数寄せられました。
また、こんなこともありました。
模型が趣味だという某誌の編集デスクは、手にしたMGモデルの中身を見て「こりゃあ組み立てるのに一生かかるよ。無理だ無理」と本気でいいました。
また、某誌の編集者がガンプラ集めが趣味だと言ってきました。へえ、ガンプラ作るんだ、と聞くと、彼は「いや、集めるのが趣味なんで、作りはしないんです」と答えました。プラモは作ってなんぼだろうというと、彼は、キットを集めるのが趣味で実際には作らない人も結構います、と答えました。


元々、模型というのは面倒な趣味です。いちいち厄介な作業を繰り返し、それでも自分の理想とする模型を完成させたいから苦労するのです。模型に限らず様々な作り物を職業とする私が、模型作りから教わったことは決して少なくありません。仕上がりを想定して計画的に物事を進めること。既成概念にとらわれずあらゆる手法と素材を駆使して完成に近づけること。観察と想像力で物事を組み立てる手法など、これらは皆、模型作りの中で培ってきたような気がします。そして何よりも「ものを作る喜び」を教わってきたのです。


模型関連の職業に就く知人と、居酒屋でそんな話になりました。

彼は「模型とトイの区別がこれだけ無くなってるんだから、そういう人間も出てくるさ」と言いながらジョッキを傾けています。
確かにそうかもしれません。しかし、いずれそういった人が体制派を占めた時、手軽に物づくりの楽しさを教えてくれる「模型」という文化がなくなってしまう。私はそう感じました。
私は「それじゃあ、いずれ模型作りなんてのは閉塞した、ごく一部の人たちの趣味になっちゃうよ。そうなったら模型作りで培われるはずの『何かを作る意思』みたいなものがなくなっていくような気がするんだ」といいました。
でもね――、彼はたしなめるように言いました。
「街から模型屋が次々と無くなって、『HOW TO BUILD GANDUM』も無くて、それでどうやって模型作るの上手くなれって、いや、どうやって模型作れって言うんだよ?」
私は言葉をなくしました。そうか、そういう環境を構築してしまった原因のひとつは、自分も含めた『メディアに関わる者』にもあったのだ。


それからしばらくして、このブログを始める事になりました。このブログでは様々な手法を採りながら、読者の皆さんに少しでも『模型を作ってみたい』と思っていただけるよう考えてきました。そんな時に「MODELER'S PRESS JAPAN」からお話をいただきました。どうやら私と同じように感じ、危機感を抱いていた人々がいたようだと、心から嬉しくなりました。そんな人たちと一緒に、模型を趣味とする人たちの力に少しでもなれたら、と思い移転を決心しました。これから先、一体どんな形になるのかわかりませんが、「線香亭無暗のやたら模型制作部」は続きます。模型を作る楽しさや喜びを一人でも多くの人に味わっていただけるよう微力ながら力を尽くしていくつもりです。


当ブログの読者の皆様、これまで本当にありがとうございました。
これまでご協力いただいたメーカー、メディアの皆様、心より御礼申し上げます。


そして、新しいサイト「MODELER'S PRESS JAPAN」共々、「線香亭無暗のやたら模型制作部」をこれからも宜しくお願いいたします。

移転先: MODELER'S PRESS JAPAN
アドレス: http://modelers-press.jp/

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てな訳で、なんとなく最終回っぽくなりましたが、移転先でバリバリ模型作りまっせ!!!
ああ、真面目な話書いたら肩凝っちゃった。
あ、このブログは当面残しておきますので、皆様のアーカイブとしてご利用ください。新しい記事は新サイトのほうで。

さあ、最後はホワイト・グリント君の雄姿でお別れです。

それでは皆様、ご機嫌よろしゅう。
これから新サイトで何が始まるのか、乞御期待!!!!